「気運」と「機運」は、どちらも「きうん」と読むけれど、意味の違いや使い分けがよくわからないと困っていませんか。
ニュースでは「機運が高まる」をよく見かける一方で、辞書には「気運」も載っているため、どちらを書けばよいか迷う方も多いのではないでしょうか。
辞書では、気運は「物事がある方向に進もうとする傾向」、機運は「物事をなす時機」と説明されています。
ただし、新聞では「気運」を使わず「機運」に表記をそろえているため、目にする機会は「機運」のほうが多いのが実情です。
この記事では、2つの言葉の意味と違い、新聞や公用文での扱い、迷ったときの使い分けまでわかりやすくご紹介します。
例文や言い換えの言葉も載せているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 気運と機運の意味の違いと、漢字からの覚え方
- 新聞が「気運」を「機運」にそろえている理由
- 公用文やビジネス文書で迷ったときの使い分け
- 「機運が高まる」などの例文と、類語・英語表現
気運は「物事が向かう流れ」、機運は「物事をなす時機」という違いがある

気運は世の中や物事が向かう「流れ」を、機運は何かを行うのにちょうどよい「時機」を表す言葉です。
読み方はどちらも「きうん」で、「高まる」と組み合わせると意味がとても近くなります。
まずは2つの言葉の中心にある意味を、表で比べてみましょう。
| 項目 | 気運 | 機運 |
|---|---|---|
| 読み方 | きうん | きうん |
| 中心の意味 | 物事がある方向に進もうとする傾向 | 物事をなす時機・時のめぐりあわせ |
| 注目しているところ | 世の中の流れ・なりゆき | 行動に合ったタイミング |
| 辞書の用例 | 政権交代の気運が高まる | 機運が熟する・機運に乗じる |
| 新聞での書き方 | 使わずに「機運」と書く | そのまま使う |
気運は世の中や物事が一定の方向へ進もうとする傾向を表す
デジタル大辞泉では、気運を「物事がある方向に進もうとする傾向」「時のなりゆき」と説明しています。
主役になるのは個人の行動ではなく、社会や集団の中に生まれる大きな流れです。
たとえば、多くの人が同じ方向を向き始め、世の中の空気が少しずつ変わっていく様子を表すときに使います。
辞書の用例にある「政権交代の気運が高まる」も、有権者全体の流れが変わりつつある様子を表した言い方です。
「流れが一定の向きに動いている」と感じる場面で気運を思い出すと、使い分けやすいでしょう。
機運は何かを行うのにちょうどよい時のめぐりあわせを表す
機運は、デジタル大辞泉で「時のめぐりあわせ」「物事をなす時機」と説明されている言葉です。
中心にあるのは、ある行動を起こすのに条件がそろったタイミングという考え方になります。
たとえば、長く話し合ってきた計画について「実行の機運が熟した」と言えば、今が動きどきだという意味です。
気運が「流れ」を見ているのに対し、機運は「いつ動くか」を見ている点が違います。
どちらも辞書に載っている言葉で、どっちが正しいということはない
「機運と気運はどっちが正しいのか」と迷う方もいますが、どちらも国語辞典に載っている言葉です。
文化庁の国語課題小委員会の議事録でも、「気運」と「機運」はそれぞれ項目を立てて、別の言葉として載せている辞書が多いと紹介されています。
同じ議事録では、明鏡国語辞典が気運を物事がある状態に向かう傾向、機運を何かを行うのに適した時のめぐりあわせとして説明している例も挙げられました。
つまり、間違いかどうかではなく、伝えたい中身に合うのはどちらかで選ぶ言葉と言えます。
ただし、新聞のように「機運」に統一している媒体もあるので、その事情は後の見出しで詳しく見ていきましょう。
気運の意味は「物事がある方向に進もうとする傾向・時のなりゆき」

気運は、物事が一定の方向へ動いていこうとする傾向や、時のなりゆきを表す言葉です。
個人の気分ではなく、社会や集団全体の動きをとらえるときに使われます。
ここでは辞書の説明、言葉の古さ、自然な例文の作り方を順に確認していきましょう。
辞書では「時勢」「時運」とも言い換えられている
精選版日本国語大辞典は、気運を「時世のなりゆき」と説明し、続けて一定の方向をとろうとする傾向とも書いています。
さらに言い換えとして、まわりあわせ・時運・時勢といった言葉も並んでいるのが特徴です。
字通では「時の勢いのなりゆき」と説明されており、勢いを持った流れというイメージがつかめるでしょう。
| 辞書 | 気運の説明(要点) |
|---|---|
| デジタル大辞泉 | 物事がある方向に進もうとする傾向。時のなりゆき |
| 精選版日本国語大辞典 | 時世のなりゆき。一定の方向をとろうとする傾向。時運。時勢 |
| 字通 | 時の勢いのなりゆき |
たとえば「改革の気運」と言えば、改革に向かう流れが社会の中に生まれている状態を指します。
3つの辞書に共通するのは、「方向」と「なりゆき」という考え方です。
1783年の『授業編』に「天地の気運」という古い用例がある
精選版日本国語大辞典は、気運の初出の用例として、1783年の『授業編』にある「天地の気運にあづかることにて」という一文を挙げています。
江戸時代の中ごろには、すでに書き言葉に登場していたのです。
中国の古典にも用例があり、字通では『世説新語』の故事が出典として示されています。
古くから天地や時代の大きな流れを表す言葉として使われてきたと知ると、意味の芯がつかみやすくなるでしょう。
たとえば「時代の気運」という言い方には、個人の力では変えにくい大きな流れという響きがあります。
気運の例文は社会や集団の流れを主語にすると自然になる
気運を使うときは、「〇〇の気運」「〇〇への気運」のように、何に向かう流れなのかを前に置く形が基本です。
あとに続ける言葉は、「高まる」「生まれる」「盛り上がる」など、流れの強さや変化を表すものがよく合います。
- 地域の祭りを復活させようという気運が、若い世代を中心に高まっている。
- 環境への関心が広がり、プラスチックごみを減らそうという気運が生まれている。
- 大会の開催が近づき、町全体に応援の気運が盛り上がってきた。
- 働き方を見直す気運が社内に広がり、会議の進め方が変わった。
どの例文も、主役は一人ひとりの気持ちではなく、地域・社会・会社といった集団の流れになっています。
新聞のように「機運」と書く場合でも、例文の形は変わりません。
機運の意味は「物事をなす時機・時のめぐりあわせ」

機運は、物事を行うのにちょうどよい時機や、時のめぐりあわせを表す言葉です。
「今が動くときかどうか」というタイミングに目を向けているのが、気運との大きな違いになります。
辞書の説明と古い用例、基本の使い方を見ていきましょう。
辞書には「ちょうどよい時機」に加えて世の中の動向の意味も載っている
デジタル大辞泉は機運を「時のめぐりあわせ」「物事をなす時機」と説明し、精選版日本国語大辞典は「おり」「ちょうどよい時機」と書いています。
ここまでは、タイミングを表す意味が中心です。
一方で精選版日本国語大辞典には、世の中の動向や趨勢(すうせい)という意味も挙げられています。
この2つ目の意味は気運にかなり近く、2つの言葉が混同されやすい理由の1つと考えられるでしょう。
| 辞書 | 機運の説明(要点) |
|---|---|
| デジタル大辞泉 | 時のめぐりあわせ。物事をなす時機 |
| 精選版日本国語大辞典 | 時のめぐりあわせ。ちょうどよい時機。世の中の動向 |
| 字通 | 時運の意 |
たとえば「両国の話し合いの機運が熟した」と言えば、交渉を始めるのにちょうどよい時が来たという意味です。
文脈によって「タイミング」と「流れ」のどちらに重心があるかを読み取ることが大切になります。
字通が機運を「時運の意」と説明している点も、気運の言い換えとして時運が挙がっていることと重なる部分です。
江戸時代の『椿説弓張月』に「機運よからず」という古い用例がある
精選版日本国語大辞典は、機運の初出の用例として、読本『椿説弓張月』(1807〜11年)の一文を挙げています。
そこにある「わが父の、機運よからずとて」は、めぐりあわせがよくないという意味で用いられた例です。
気運の古い用例がある『授業編』(1783年)とは、20年あまりしか離れていません。
どちらも江戸時代から使われてきた言葉で、新しい言い方や誤った書き方ではないことがわかります。
たとえば時代小説などで「機運に恵まれない」という表現を見かけたら、「めぐりあわせが悪い」と読みかえると意味がとりやすいでしょう。
機運の例文は「熟する」「乗じる」の形が基本になる
辞書の用例に挙がっているのは、「機運が熟する」と「機運に乗じる」の2つです。
どちらも、動くのにちょうどよい時が来た、その時をうまく使うというタイミングの意味がはっきり出る言い方になります。
- 準備が整い、新しい制度に切り替える機運が熟した。
- 景気の回復という機運に乗じて、新しい店を出した。
- 住民の声がまとまり、駅前を整備する機運が高まっている。
3つ目の「機運が高まる」は、流れの意味でも使われるため、気運と書いても意味が通ります。
一方、「熟する」「乗じる」と組み合わせるときは、タイミングを表す機運のほうが自然です。
漢字の「気」と「機」に注目すると違いを覚えやすい

「気」は空気や雰囲気、「機」は機会やきっかけを表す漢字なので、そこから意味の違いを覚えられます。
どちらにも付いている「運」は、時運(時のめぐりあわせ)の「運」と同じく、めぐりあわせを表す字と考えるとわかりやすいでしょう。
ここでは漢字の意味と、国立国語研究所の分類語彙表での扱いを見ていきます。
「気」は空気や雰囲気のように場に広がるものを表す
漢字の「気」には、空気・雰囲気・気分のように、目には見えなくても場に広がっているものを表す意味があります。
漢字辞典のJisho.orgでも、「気」の意味として「air」「atmosphere」「mood」が挙げられているほどです。
この字を使った気運は、世の中に広がる空気が、ある方向に動いていく様子と結び付けて覚えられます。
たとえば「町に祭りの気運が広がる」は、町中の雰囲気が祭りに向かって動いている情景をイメージするとわかりやすいでしょう。
| 漢字 | 意味のイメージ | その字を使う言葉の例 |
|---|---|---|
| 気 | 空気・雰囲気・気分 | 空気、雰囲気、気分 |
| 機 | 機会・きっかけ・しかけ | 機会、時機、好機 |
| 運 | めぐりあわせ | 時運、運勢 |
表のように、気は「場の空気」、機は「時のきっかけ」と分けて考えるのがコツです。
「機」は機会や時機のようにタイミングを表す
「機」は機械の「機」でもありますが、機会・時機・好機のように、ちょうどよいときを表す意味も持つ漢字です。
Jisho.orgでは、「機」の意味として「machine」と並んで「opportunity」「occasion」も挙げられています。
この字を使った機運は、何かを始めるのにちょうどよいきっかけが来ている状態と結び付けると覚えやすいでしょう。
たとえば「時機到来」「時機を見て行動する」の「機」と同じだと考えれば、迷ったときにも思い出しやすいはずです。
分類語彙表でも機運は好機の仲間、気運は時運の仲間に分けられている
国立国語研究所が公開している『分類語彙表』は、日本語の言葉を意味の近さでグループに分けた資料です。
この表で機運は「時機・時刻」の項目に入り、好機・チャンス・ねらい目・勝機・商機と同じ行に並んでいます。
一方の気運は「人生・禍福」の項目で、時運・国運・家運・社運と同じ行に並ぶ位置づけです。
| 言葉 | 分類語彙表の項目 | 同じ行に並ぶ言葉 |
|---|---|---|
| 機運 | 時機・時刻(1.1611) | 好機、チャンス、ねらい目、勝機、商機、戦機、好期 |
| 気運 | 人生・禍福(1.3310) | 時運、国運、家運、社運 |
言葉を意味で分けた資料でも、機運は「チャンス」の仲間、気運は時代や集団のめぐりあわせの仲間として扱われているのです。
この分け方を知っておくと、例文を作るときに「チャンスの話か、流れの話か」で選びやすくなるでしょう。
新聞では「気運」を使わず「機運」にそろえている

新聞では、「気運」と書く場面でも「機運」に置き換えて表記をそろえています。
これは、文化庁の国語課題小委員会で新聞の表記について発表した委員の資料で確かめられる内容です。
どのような考え方で統一しているのかを、順に見ていきましょう。
文化庁の小委員会資料に「気運→機運」が表記統一の例として載っている
2016年10月7日の文化審議会国語分科会・国語課題小委員会では、「書き言葉のコミュニケーション」をテーマにした委員の発表資料が配られました。
その中で、新聞が言葉を言い換える理由の1つとして、表記の違いが読者を戸惑わせることが挙げられています。
「表記統一の例」の表には、意味がほぼ同じで書き方が違う「異語的同語」として、「気運→機運」が載っているのです。
| 統一される前の書き方 | 新聞で使う書き方 | 印 |
|---|---|---|
| 気運 | 機運 | ▼ |
| 情況 | 状況 | ▼ |
| 実状 | 実情 | ▼ |
| 独得 | 独特 | ▼ |
| 好運 | 幸運 | ▽ |
| 穏和 | 温和 | ▽ |
| 因襲 | 因習 | ▽ |
たとえば「情況」を「状況」、「独得」を「独特」と書くのと同じように、「気運」も「機運」に置き換える対象とされています。
黒い三角の印は「新聞が一方に決めた言葉」を表す
資料の表では、言葉ごとに白い三角(▽)か黒い三角(▼)の印が付けられています。
議事録によると、白い三角は、一般にもおおよそそちらを使う人が多い書き方の印です。
黒い三角は、一般にはどちらも同じくらい使われているため、新聞がどちらか一方に決めたものを表しています。
同じ表で「好運→幸運」「穏和→温和」に付いているのは白い三角で、一般にも「幸運」「温和」と書く人が多い組み合わせです。
これに対し、「気運→機運」には黒い三角が付いています。
つまり、「気運」が誤りだから直しているのではなく、どちらも使われている中で新聞が「機運」を選んだというわけです。
裏を返せば、世の中では今も「気運」と「機運」の両方の書き方が使われているということでしょう。
1つの記事で書き分けても意図が伝わりにくいことが統一の理由
同じ議事録では、委員が統一の理由も説明しています。
辞書の上では別の言葉でも、たとえば「指針を作成するキウンが高まった」という文で、どちらがふさわしいかを決めるのは簡単ではありません。
こだわって1つの記事の中で書き分けても、その意図は読者に伝わらず、表記が違う理由のほうに気を取られてしまうおそれがあるという考え方です。
表記をそろえれば、読み手が余計なところで頭を使わずに済むという効果も見込めるでしょう。
なお、日本新聞協会の新聞用語懇談会は、新聞・通信・放送各社が「新聞用語集」をよりどころに表記することを原則としつつ、各社の用語使用を縛るものではないとも説明しています。
新聞の表記は日本新聞協会の「新聞用語集」がよりどころになっている
新聞の書き方のもとになっているのは、日本新聞協会の新聞用語懇談会がまとめる「新聞用語集」です。
2010年の追補版のまえがきでは、新聞・通信・放送各社が日常使う用語は、この用語集をよりどころに表記することを原則とすると書かれています。
文化庁の小委員会で示された委員の資料では、新聞が言葉を言い換える理由が次の3つに整理されていました。
| 言い換える理由 | 対象になる言葉の例 |
|---|---|
| 難しいから | 難しい語、専門用語、カタカナ語 |
| 戸惑うから | 異表記、異語的同語(表記統一) |
| 傷つけるから | 不快感や屈辱感を与える語句・表現 |
気運と機運は、このうち2つ目の「戸惑うから」に当たる言葉です。
ただし追補版には、用語集は各社の用語使用を縛るものではないとも書かれており、最終的な表記は各社の判断になります。
たとえば新聞で「気運」の字を見かけることがあっても、それだけで誤植とは限らないと考えておくとよいでしょう。
公用文やビジネス文書では1つの文書の中で書き方をそろえる

公用文やビジネス文書では、どちらを選ぶかよりも、1つの文書の中で書き方をそろえることが大切です。
国の文書の書き方をまとめた「公用文作成の考え方」にも、機運と気運のどちらを使うかの決まりはありません。
文書を書くときに押さえたい考え方を確認しておきましょう。
「公用文作成の考え方」には機運と気運の決まりはない
「公用文作成の考え方」は、2022年1月7日に文化審議会が建議した、国の府省庁などが作る文書の書き方の目安です。
この資料の本文には「機運」「気運」という語は出てこず、どちらかに統一するといった指定もありません。
そのため、辞書どおりの意味で選んでいれば、どちらを使っても誤りとは言えないでしょう。
たとえば自治体の計画書で「〇〇の機運醸成」と書くのも、「〇〇への気運が高まる」と書くのも、意味に合っていれば問題はないと考えられます。
| 確認したこと | 「公用文作成の考え方」での扱い |
|---|---|
| 機運・気運の指定 | 書かれていない |
| 同じ用語の表記 | 1つの文書の中で混在させない |
| 同じ音の言葉 | 混同されないように言葉を選ぶ |
| 表記の考え方 | 個人の判断に頼らず、部署で共有する |
表のとおり、示されているのは個々の言葉の選び方より、文書全体での表記のそろえ方です。
同じ用語に幾つもの表記を混ぜないのが基本
「公用文作成の考え方」には、一つの文書の中で同じ用語に幾つもの表記が混在しないようにする、という考え方が示されています。
音が同じ言葉について、混同されないように言葉を選ぶことも注意点の1つです。
気運と機運はまさに同じ読みの言葉なので、1つの文書の中で「気運」と「機運」を混ぜて書かないようにしましょう。
たとえば企画書の1ページ目で「機運が高まる」と書いたら、後のページでも「機運」を使い続けるのが読みやすい書き方になります。
引用した文章に別の表記があるときは、その部分だけ元の表記のままにしておくとよいでしょう。
社内や媒体の表記ルールがあればそれに従う
「公用文作成の考え方」では、表記について個人の判断に頼らず、各部署で考え方を共有しておくことも勧めています。
会社や団体に表記の手引きや用語集がある場合は、そこで決められた書き方を優先するのが確実です。
新聞社や出版社などの媒体に寄稿するときも、その媒体の表記ルールで「機運」に直されることがあります。
決まりがない職場なら、新聞にならって「機運」にそろえておくと、多くの人が見慣れた書き方になるでしょう。
判断に迷ったときは、次の見出しの判断表も参考にしてください。
迷ったときは場面別の判断表で使い分けを決められる

使い分けに迷ったら、まず文書のルールを確かめ、次に「流れ」か「タイミング」かで選ぶと決めやすくなります。
ここまでの内容を、場面ごとの判断表にまとめました。
文章を書く前に、さっと確認する目的で使ってください。
文書の種類から選ぶなら判断表で確認する
| 場面 | おすすめの書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 新聞・ニュース風の記事 | 機運 | 新聞は「気運」を「機運」にそろえている |
| 会社・団体の文書 | 社内ルールに合わせる | 表記の手引きがあればそれが優先 |
| ルールのない仕事の文書 | 機運にそろえる | 見慣れた書き方で、表記の混在も防げる |
| 社会の流れを丁寧に書き分けたい文章 | 気運 | 辞書の意味が「傾向・なりゆき」 |
| 小説・エッセイ | 意味で選ぶ | 書き分けで響きの違いを出せる |
| 国語の問題・試験 | 問題文の意味に合わせる | 辞書の意味の違いが問われる |
表の中で、新聞とルールのない仕事の文書は「機運」と覚えておくと、迷う場面がぐっと減ります。
一方で、文章の味わいを大切にしたい場面では、意味に合わせて書き分けるのもよい方法です。
たとえば随筆で「春を待つ町に、祭りの気運が満ちてきた」と書けば、町の空気が流れのように動く様子がやわらかく伝わります。
どの場面でも、1つの文章の中で表記を混ぜないことは共通の注意点です。
内容から選ぶなら「流れ」か「タイミング」かを考える
ルールが特にない場面では、伝えたい中身が「流れ」なのか「タイミング」なのかを考えると選びやすくなります。
世の中や集団がある方向へ動いている様子なら気運、何かを始めるのにちょうどよい時が来たことを言いたいなら機運です。
- 「〇〇しようという空気が広がっている」と言い換えられるなら気運
- 「今が〇〇するのにちょうどよい時だ」と言い換えられるなら機運
- どちらにも言い換えられるなら、どちらを書いても意味は通じる
たとえば「脱炭素の取り組みを進める〇〇が高まる」は、社会の流れとも、取り組むのに適した時期とも読めます。
このように両方の意味が重なる文では、文化庁の議事録にもあったように、細かい書き分けは読み手に伝わりにくいものです。
迷うほど意味が重なるときは、次の項目のとおり「機運」にそろえてしまって構いません。
迷ったら「機運」と書けば新聞と同じ書き方になる
どうしても決められないときは、新聞と同じ「機運」を選ぶのが無難です。
新聞は「気運」を「機運」に統一しているため、読み手が日ごろ目にしている書き方とそろいます。
機運には、精選版日本国語大辞典が示すように世の中の動向という意味もあるので、流れの話に使っても意味が外れません。
反対に、「機運が熟する」「機運に乗じる」のようなタイミングの言い方を「気運」と書くと、辞書の用例とずれてしまいます。
迷ったときは、「迷ったら機運、流れを強調したいときだけ気運」と覚えておきましょう。
「機運が高まる」「機運が熟する」など組み合わせで使い方が決まる

「高まる」「生まれる」はどちらの書き方とも合い、「熟する」「乗じる」は機運と結び付くのが基本です。
組み合わせる言葉によって、自然な書き方が変わってくるでしょう。
よく使う組み合わせを、意味と例文で確認していきます。
「機運が高まる」はある方向へ進む流れや勢いが強くなること
「機運が高まる」は、ある物事を進めようとする流れや勢いが強くなっていく様子を表す言い方です。
英和辞書のJisho.orgでは、「気運が高まる」と「機運が高まる」を同じ見出しにまとめ、「to gather momentum(勢いを増す)」と訳しています。
この組み合わせは流れの意味が中心なので、「気運が高まる」と書いても誤りではありません。
| 組み合わせ | 意味 | 合う書き方 |
|---|---|---|
| 〇〇が高まる | 流れや勢いが強くなる | 機運・気運のどちらも |
| 〇〇が生まれる | 流れや雰囲気ができ始める | 機運・気運のどちらも |
| 〇〇が盛り上がる | 流れが勢いづく | 機運・気運のどちらも |
| 〇〇が熟する | ちょうどよい時になる | 機運 |
| 〇〇に乗じる | ちょうどよい時をうまく使う | 機運 |
たとえば「法改正を求める機運が高まっている」は、改正に向けた世の中の勢いが強くなっている、という意味になります。
「機運が熟する」「機運に乗じる」はタイミングを表す
「熟する」は、物事がちょうどよい状態になることを表す言葉です。
そのため「機運が熟する」は、動き出すのにちょうどよい時が来たという意味になります。
「機運に乗じる」は、そのちょうどよい時をうまく利用して物事を進めるという意味の言い方です。
どちらも辞書の用例に挙がっている組み合わせなので、タイミングの意味がはっきり伝わるでしょう。
たとえば「創業から10年、海外に出る機運が熟した」と書けば、準備と環境がそろった今こそ動くときだ、という気持ちが表れます。
「機運を醸成する」は雰囲気や流れを少しずつ作ること
「機運醸成」「機運を醸成する」は、ある取り組みに向けた雰囲気や流れを少しずつ作っていくという意味の言い方です。
「醸成」には、時間をかけてある雰囲気や状態を生み出すという意味があります。
行政やイベントの資料では、目標に向けて人々の関心を高めていく取り組みを指す表現としてもおなじみです。
たとえば地域で「スポーツ大会の開催に向けた機運醸成」と言えば、ポスターや体験会などで住民の関心を高めていく取り組みを指します。
この場合も意味は流れに近いので「気運醸成」と書くこともできますが、資料の中ではどちらかにそろえておきましょう。
個人の気持ちには「意欲」「やる気」を使う
気運も機運も、辞書の説明は「物事の傾向」や「時のめぐりあわせ」で、個人の気分そのものを表す言葉ではありません。
「私の機運が高まった」「試験に向けて気運が上がる」のように、個人の気持ちに使うと意味がずれてしまいます。
一人の気持ちが前向きになったことを言いたいときは、「意欲が高まる」「やる気が出る」などの言葉を選びましょう。
- × 新しい趣味を始めようと、私の機運が高まった。
- ○ 新しい趣味を始めようと、意欲が高まった。
- ○ 職場で新しい取り組みを始めようという機運が高まった。
集団の話か個人の話かを確かめるだけで、こうした使い方のずれは防げます。
言い換えや類語・英語表現を知ると文章の幅が広がる

気運は「時勢」「時運」、機運は「時機」「好機」などに言い換えられ、英語では momentum や opportunity が近い言葉です。
同じ言葉が続くときや、もう少しやわらかく書きたいときに役立ちます。
似た字の「運気」との違いもあわせて確認しておきましょう。
気運は「時勢」「時運」「流れ」に言い換えられる
精選版日本国語大辞典は、気運の言い換えとして時運・時勢を挙げています。
デジタル大辞泉によると、時勢は時代の移り変わるありさまや世の中のなりゆきを表し、類語に時流・風潮・トレンドなどが並ぶ言葉です。
時運は時のめぐりあわせや時の運を表す言葉で、類語には運命・運勢・巡り合わせが挙げられています。
| 言い換えの言葉 | 意味 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 時勢 | 時代の移り変わり・世の中のなりゆき | 改革の気運 → 改革に向かう時勢 |
| 時運 | 時のめぐりあわせ | 時代の気運 → 時運 |
| 風潮 | 世の中の傾向(時勢の類語) | 節約の気運 → 節約の風潮 |
| 流れ・空気 | 日常的な言い方 | 復興の気運 → 復興への流れ |
たとえば話し言葉では、「〇〇の気運が高まる」を「〇〇しようという流れが強まる」と言い換えると、ぐっとわかりやすくなります。
機運は「時機」「好機」「潮時」に言い換えられる
デジタル大辞泉では、機運の類語として時機・機会・チャンス・好機・潮時などが挙げられています。
時機は何かを行うのによい機会を表す言葉で、「時機を見て行動する」「時機到来」のように使うのが一般的です。
たとえば「今が出店の機運だ」と言いたいときは、「今が出店の好機だ」と言い換えると意味がはっきりします。
潮時もちょうどよい時を表しますが、言い換えに使うときは少し注意しましょう。
デジタル大辞泉の補説では、文化庁の調査で「そろそろ潮時だ」を「ちょうどいい時期」の意味と答えた人が、平成24年度の60.0%から令和6年度は41.9%に減ったと紹介されています。
同じ調査で「ものごとの終わり」と答えた人は、36.1%から46.7%に増えました。
「潮時」は終わりの意味に受け取られることがあるので、前向きな意味で使いたいときは「好機」「時機」を選ぶほうが誤解されにくいでしょう。
英語では momentum・trend・opportunity で表す
英和辞書のJisho.orgでは、機運の意味を2つに分けて英訳しています。
1つ目は opportunity・chance・good time (to do) で、何かをするのによい時という意味です。
2つ目は trend・tendency・momentum で、こちらは通常「気運」と書くと注記されています。
| 日本語 | 近い英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 機運(タイミング) | opportunity / chance / good time (to do) | 何かをするのによい時 |
| 気運・機運(流れ) | trend / tendency / momentum | 傾向・勢い |
| 機運が高まる | gather momentum | 勢いを増す |
たとえば「改革の機運が高まっている」は、英語では momentum を使って「改革への勢いが増している」と表すのが近い言い方です。
英語でも「タイミング」と「流れ」で単語が分かれていると知ると、日本語の使い分けもイメージしやすくなるでしょう。
「運気」は自然界に表れる運勢を表す別の言葉
「気運」と字の並びが逆の「運気(うんき)」は、読み方も意味も違う言葉です。
デジタル大辞泉や精選版日本国語大辞典では、運気を自然界の現象に表れる人の運勢と説明しています。
天地と人体を貫いて働くとされた「五運」と「六気」を指し、漢方医が重んじた考え方でした。
占いなどで見かける「運気が上がる」も運勢という意味で使われるもので、世の中の流れを表す気運とは別物と考えてください。
たとえば「景気回復の運気が高まる」と書くと意味がずれるので、世の中の流れには「気運」か「機運」を使うのが自然です。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 気運は「物事がある方向に進もうとする傾向・時のなりゆき」を表す言葉です。
- 機運は「物事をなす時機・時のめぐりあわせ」を表し、世の中の動向の意味もあります。
- 古い用例は、気運が1783年の『授業編』、機運が1807〜11年の『椿説弓張月』です。
- 「気」は空気や雰囲気、「機」は機会やきっかけと考えると違いを覚えやすくなります。
- 文化庁の小委員会資料では、新聞が「気運→機運」と表記を一方に決めていると示されています。
- 「公用文作成の考え方」に機運と気運の決まりはなく、1つの文書の中で表記をそろえることが基本です。
- 「高まる」はどちらとも使え、「熟する」「乗じる」は機運と組み合わせます。
- 言い換えは気運なら時勢・時運、機運なら時機・好機、英語なら momentum や opportunity が近い言葉です。
気運と機運は、どちらも辞書に載っている言葉で、「流れ」か「タイミング」かで意味が分かれます。
迷ったときは新聞と同じ「機運」にそろえ、1つの文書の中で表記を混ぜないようにするのが安心な書き方です。
社内や媒体に表記のルールがある場合は、そちらを先に確認してください。
意味の違いを押さえたうえで、場面に合った言葉を選んでみてはいかがでしょうか。
